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創業体験② ~事業を始めるまでの失敗と気づき~

売上を計算するフォーマットを作成する

創業計画書の作成に取りかかって最初にしたことは、「事業の見通し」を立案することでした。創業計画書の中の「事業の見通し」は、「創業当初」と「1年後又は軌道に乗った後」を区分して書くようになっています。区分する理由は、「創業当初」は、売上があまり見込めない期間を組み入れるなど売上・収益は少なめに、逆に、費用は想定外の支出に備えて大目にみるなど、しっかりリスクテイクすることが必要だからです。
とはいえ、肝心な点は、売上をどう見込むかです。売上金額の基本的な計算式は、販売個数×単価、顧客数×単価ですが、実際は、業種・業態、地域特性などで計算式は変わります。と理屈ではわかっていても、実際、経営コンサルタント業の売上をどう計算していいかわかりません。そもそも経営コンサルタント業の売上が、どのような中身で構成されているのかもつかんでいませんでした。まず、経営コンサルタント業で成功している経営コンサルタントのノウハウ本を買ってきて読みました。経営コンサルタント会社のホームページや就職情報サイトから情報を入手しました。全国中小企業診断協会が実施した中小企業診断士を対象にしたアンケート調査に具体的な仕事や報酬などに関する情報があることを発見し参考にしました。養成課程の先生をつとめてくださる中小企業診断士の方にヒヤリングもさせていただきました。こうした情報のほか、J-Net21、日本政策金融公庫、業種別審査辞典(㈱きんざい発行)などから、業種別のデーターや事業計画の作成に必要な事例、情報が発信されています。
さて、こうした情報収集からわかったことは、経営コンサルタント業には、コンサルタント料、顧問料、講師料、執筆報酬などがあり、単発で終わる仕事と一定期間継続する仕事があること。報酬単価は日当が基本で、仕事の内容によって差があること。さらに、仕事の中身が同じであっても、公的機関から受ける仕事は民間から受ける仕事より報酬が安いことなどがわかりました。この結果、売上を計算するフォーマットとして、仕事の種類、仕事を受けるルートを縦横にマトリックス表を作り、セルごとに報酬単価と従事日数を設定し、両者を乗じ、合算した結果を全体の売上にすることにしました。

初めて売上を計算する

売上を計算するフォーマットは作成しましたが、恥ずかしい話ですが、年間何日、何時間働くか考えていませんでした。そこでまず、年間何日、何時間働くか労働時間を決めることにしました。月平均20日、年間240日、1日8時間、残業はゼロ、年間労働時間を1,920時間としました。もちろん、現実は、残業も土日も仕事をすることになりますが、そうした時間は緊急時に対応するためにとっておいた方が良いと考え労働時間に入れませんでした。
次に、創業当初、売上が思うようにあげることができない期間をどの程度見込むかです。私は、思い切って、7ケ月は売上ゼロとしました。内訳は、会社設立後、2ケ月は業務面の仕組みを整備する期間、残り5ケ月は会社を売り込む営業期間としました。もちろん一日も早く売上をあげたい気持ちはありましたが、希望的な見通しは焦りを生む要因になると考えました。
仕事を受けるルートについては、創業から2年は、公的機関からの仕事を中心にし、その後、徐々に民間からの受注比率を高めることにしました。また、売上を決める重要要素の報酬単価は、先のアンケート調査で報告されている平均報酬の8掛けで設定しました。
このように私なりにリスクテイクして初めて売上を計算しました。その結果、創業当初の売上高は2百万円。3年後の売上高は6百万円でした。創業当初の売上高は想定していましたが、3年立っても売上高が6百万円にしかならない結果には肩を落としました。

費用を試算し利益を確保するための売上高を設定する

労働時間を増やす、報酬単価の設定を変える、民間からの受注比率をアップするなど、売上を計算する条件を変えれば、計算上、売上は簡単に増やせます。しかし、安易にそれをやれば、リスクテイクの度合いが低くなります。
そこで、今度は、視点を変えて、費用を試算することにしました。経営コンサルタント業は、原価、仕入といった変動費はゼロ。すべて経費は固定費です。社員は私一人だけですので、私の給料、活動費用を大目に試算し、年間総費用を7百万円としました。変動費がないので損益分岐点売上を計算するまでもありません。総費用7百万円ですから利益を確保するためには売上高は7百万円以上が必要です。初めて計算したときの3年先の売上高が6百万円ですからギャップは1百万円以上です。

競争に勝つための課題探しに着手する

埋めるべきギャップを明確にしたまでは良かったのですが、いざ、課題を考え始めると、どうしても売上の計算条件を変えることに意識がいきます。報酬単価を平均報酬にしたらどうか、民間の受注比率をもっとあげてはどうかなど、一度は、リスクテイクの度合いが低くなるからという理由から断ち切ったはずの考えが再浮上してきます。
これでは元に逆戻り。考える視点、スタンスを変えないと抜け出せないと考えました。売上の計算条件を変えるにしても、それは結果であって、具体的にどうやるか、アクションプランが必要になります。といっても、経験やノウハウがないので、なかなかこれならいける、というアクションプランは出てきません。
悶々としているうちに考えが出てこない原因は、競争を意識したアクションプランを考えていないからだ、ということに気づきました。同業他社より勝るものがあって、それを顧客に認知していただければ、結果として、報酬単価や民間からの受注比率をあげることができるのではないか。
そのことに気づいて、最初に創業計画書に書いたセールスポイントや販売戦略をみると、以前にも増して貧相さが際立ちます。
これではいかんと思い、一旦、売上金額を考えることから離れることにしました。
そして、「競争力のある経営コンサルタントになる」にはどうするか、について考え始めました。