関西経済同友会 企業経営委員会の提言
皆さまは、2020年4月に一般社団法人関西経済同友会の企業経営委員会から発表された『経営者は「魅力ある企業」に向けた行動・仕組みづくりを ~「人」を活かす経営による革新と成長を目指して~』と題した提言を読まれたでしょうか。
私は、4月7日の日本経済新聞の朝刊のなかの小さな記事でその存在を知りました。ちょうど、コロナ禍に立ち向かう中小企業を支援するための筋道、道具を見つける材料集めを始めたばかりの頃でした。前回のコラムで、皆さまの決断を助ける材料を提案します、と申し上げましたが、その材料の一つがこの提言書です。
https://www.kansaidoyukai.or.jp/wp-content/uploads/2020/04/200406_Maintext.pdf
企業経営委員会の活動は、活動実績によると、2019年6月からスタートし2020年4月6日の記者発表にいたっています。ですので、時期的にコロナに触れることはできないので、コロナに関することは一切出てきません。それでも、私が、皆さまにこの提言書を推薦するには二つの理由があります。その理由を皆さまにお伝えしたいと思います。
経営者一人でコロナ禍は乗り越えられない
中小企業の強みは、オーナー経営者が多く、経営者が決断すれば会社が動く機敏性にある、と言われます。その一方で、経営危機に陥った中小企業で、経営者が一人問題を抱え込み、悩み、苦しむ姿を何度も目の当たりにしてきました。そして、懸命に踏ん張って経営危機を乗り越えた経営者も知っています。本当に凄い経営者だと心から尊敬しました。
どうでしょうか、皆さまのなかには、何ごとも自分が考え、決断しないと会社が動かないと思っている方が相当多くおられるのではないでしょうか。確かに、最後の決断は皆さまがすることになるでしょう。しかし、考えることまで経営者が一人背負い込んで、果たしてこのコロナ禍による経営危機は乗り越えることができるでしょうか。さすがにこのコロナ禍による経営危機は乗り越えることが難しいのではないでしょうか。
とすれば、どうしますか。従業員の力、知恵を借りることになるのではないでしょうか。従業員がいないのなら外部の人の力、知恵を借りればいいのです。そこで、もう一度、この提言の副題を見てください。「人」を活かす経営による革新と成長を目指して、となっています。まさに、経営者と「人」が、ともに会社の成長を考え、対話し、行動を起こすことの重要性、必要性が提言の柱になっているのです。
そこでこの提言から、コロナ禍に立ち向かうにあたって「一人で抱え込まず、いろんな「人」と話し合って、知恵と力を借りる」ことの大切さを「腹落ち」してもらいたい、と思ったことが一つ目の推薦理由です。
新しい価値を創造する取組み
「魅力ある企業」とはどんな企業でしょうか。提言では、社内外の対話を通じて組織の創造性・求心力を高め、新たな価値を創造・拡大し、持続的に成長する企業が、社員・投資家・顧客などから「魅力ある企業」として評価されるとしています。コロナ禍で苦しんでいる現状を考えると、「魅力ある企業」というより「信頼される企業」といった方が受け止めやすいかもしれませんが、双方に通じる基本は同じです。
それは、新たな価値を創造し、拡大できる仕組み、体制ができていることです。
提言では、新しい価値を創造し、拡大できる仕組み、体制づくりのために、三つのことを強調しています。
・企業内外のリソースを最大限活用するために、社員をはじめ各ステークホルダーとの「対話」を重視する。
・経営者は企業の真にありたい姿を再確認し、現場に直結し地に足が着いた「企業理念」と「独自企業価値」を確立し、浸透をはかる。
・社員の企業に対するエンゲージメントを高め、仕事のやりがいと企業の成長を「同期化」させる仕組みづくりを進める。
さて、私が、この提言を読んで感じたことは、コロナ禍による経営危機に目を奪われ過ぎて視野が狭くなっていたということでした。確かに、コロナ禍による経営危機を乗り越えることが目下の緊急課題ですが、コロナ禍による経営危機を乗り越えた後も、会社は持続的に成長しないといけないのです。そのためには、新しい価値を創造し、拡大できる仕組み、体制づくりは不可欠です。そして、コロナ禍を乗り越えるうえにおいても、新しい価値を創造することは必要です。とすれば、コロナ禍による経営危機を乗り越えることと、新しい価値を創造し、拡大できる仕組み、体制づくりは同じではないか、と捉えたのです。
さらに、提言には、「人との対話」を柱に「企業理念」「独自企業価値」「エンゲージメント」など、改革実行力の基盤要素である「ビジョン」や「(組織の)一体化」に直結する内容が数多く含まれています。とうことは、提言をベースにすれば改革実行力を強化する道筋も見いだせるのではないかとも考えました。
新しい価値を創造し、拡大するための仕組み、体制を作って持続的に成長する「魅力ある企業」を目指す提言は、コロナ禍による経営危機を乗り越えるためにも、改革実行力を強化するためにも、貴重な提言になるのです。これがこの提言書を推薦する二つ目の理由です。
最後に、印象的な内容を紹介したいと思います。
それは、「おわりに」のなかの企業経営委員会委員長清水博氏の言葉です。
「今後、デジタルプラットフォームやAI等は、様々なイノベーションや生産性の飛躍的な向上をもたらすであろうが、その成果を我々の生活にとって真に豊かにするものとして広く受け入れられる商品、サービスとして結実させるためには「人」の感性や知恵の介在が必要ではないだろうか。そして、デジタル化の流れの中でそうした「人」の感性や知恵を上手く取り込むことができるかどうかが今まさに経営に問われているのではないか、そのようなことを委員会活動の中で深く感じた次第である。」
明石・神戸の中小企業の未来を照らす経営コンサル
誠光パートナーズ