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視点を変えるための視点探し

難しい新しい視点探し

考えに行き詰った時には、視点を変えてみてはどうか、と言われます。例えば、経営者の視点からだけではなく、従業員やお客様の視点で考えてみてはどうか、とか、日本の市場だけを考えずに、海外にも目を向けてはどうかなどです。つまり、良い知恵が浮かばないのは、視野が狭くなったり、偏っていることが原因で、そこから抜け出すには、視野を広げ、多角的に考えることが必要だということです。
そして、コロナ禍の現在、良い知恵が浮かばないで考えに行き詰っている方もいるのではないでしょうか。その意味では、視点を変えることが役に立ちそうですが、では、どのように視点を変えれば良いのか新しい視点を見いだすことも難しいのが正直なところではないでしょうか。

視点探しの道

新しい視点についてですが、コロナ禍による経営危機の深刻さを考えると、確信を持ってこういう視点で考えれば良い知恵を得ることができる、と言えるほどの提案は私にはできそうにありません。ですが、試行錯誤をさせた結果、良い知恵に結びつかないかもしれないが、取り上げてみるだけの価値はある、と言えるレベルの視点なら見つけることができる、と思い直して新しい視点を探すための材料を集め始めました。材料を集めるといっても、むやみに集めても効果がありません。そこで、材料集めの方針を決めました。
まず、視点を変えることにつなげることから、コロナが発生する以前、中小企業の経営者が重視していた視点、逆に、あまり重視してこなかった視点にはどんな視点があるか、ということから考え始め、特に、あまり重視してこなかった視点の中にコロナ禍による経営危機を乗り越えるうえで有益と思うものがあれば、それは取り上げてみるだけの価値がある視点になるのではないか、と考えました。

コロナ禍前の中小企業

私自身の経験だけではなく、他の中小企業診断士からや、毎年、発行される中小企業白書・小規模企業白書から中小企業の現状がわかります。こうした材料からコロナ禍前の中小企業が重視してきたこと、逆に、あまり重視してこなかったことを考えました。
まず、中小企業の経営者が一番重視していることはどんなことか、考えました。私の答えは、売上と利益です。売上と利益は財務数字です。ですから、売上と利益を一番重視しているということは、財務的価値を一番重視していると言い換えることができます。もちろん、経営理念やビジョンを明示し、お客様のこと、地域のことなど広く社会にお役に立つことを大切に経営している会社もありますが、そういった会社でも日常の事業活動において重視しているのは売上・利益という会社も多いように思います。

一方、売上と利益といった財務的価値を重視しているのですが、経営管理、計数管理体制が未整備な中小企業も多いのです。予算を立案していない会社、月次決算や財務諸表の作成を税理士に任せきっている会社があります。数字で日々の経営状況を管理できている会社、PDCAサイクルが廻っている会社は多くありません。逆に言えば、それだけ中小企業経営者の管理力・経営力に頼った経営が行われているということでもあります。

さて、中小企業の慢性的な問題は、経営者の高齢化と後継者不足、従業員不足といった人に関連する問題です。昨今では「人手不足倒産」といったことまで言われるくらいですので、その深刻さは年々増しています。
そこで、従業員の採用、定着を図るため、従業員満足度を高める経営努力が各社で行われています。職場環境、処遇、福利厚生などに対する不満要因を解消し働くうえでの満足度を高めることに経営者は力を入れてきました。また、従業員満足度が高い会社ほど顧客へのサービスレベルも高く顧客の固定客化にもつながるということから経営的にも従業員満足度の向上は重要な視点になりました。

以上の通り、コロナ禍前の中小企業は、売上・利益など財務的価値、従業員満足度を高めることを重視する一方、経営者の管理力・経営力に頼った経営を行ってきた、と思うのです。

3つの新視点

中小企業経営者が重視する財務的価値の対極にどんな価値があるかを考えました。答えは、社会的価値です。自分の会社が社会にどう役に立っているか、これからどのように役に立っていけば良いか、そんな視点で会社の存在、会社の将来を考えてみるのも視点を変えるという意味で価値があると思いました。このことは、前回紹介した関西経済同友会企業経営委員会の提言の『経営者は企業の真にありたい姿の再確認と、現場に直結した地に足が着いた「企業理念」と「独自企業価値」の確立・浸透を』につながり有益だと判断しました。

コロナ禍によって「人の仕事」が大きく変化しました。デジタル化やリモートワークが急速に浸透するなかで、これからの「人の仕事」はどうすればいいのか、従業員満足度を向上するという視点に偏らず、幅広く、「デジタル化の時代における人の仕事のあり方」という視点で考えることも価値があると考えました。このことは、同委員会の提言の『仕事の「自分事化」、自発的成長を促し、多様な人材を尊重し、健全な「挑戦」と「失敗」を評価する文化を』につながり有益だと判断しました。

会社の業績が思うように回復しないと、往々にして、情報を秘匿する方向に向かってしまいがちです。それは避けねばなりません。金融機関との信頼関係や社員の不安を緩和する意味においても、コロナ禍による経営危機を、「人」の力、知恵を結集して乗り越えるためにも、情報の開示、共有化は非常に重要です。つまり、経営者の管理力・経営力に頼った経営体制からの脱却が必要です。
重要なことは、どのような情報を、どういう形で管理状態におき、タイムリーに正確な情報を社内外に公開し共有するかです。
このことは同委員会の提言の「計数管理に基づく合理的経営」につながり有益だと判断しました。

新しい視点のテーマは見えてきました。しかし、例えば、社会的価値の視点でこれからの会社の将来を考えてみたらどうでしょうか、といわれてすぐに思考に入れる方もいるかもしれませんが、そうはいっても何からどう考え始めれば良いかわからない、という方も多いのではないでしょうか。仮に、新しい視点がテーマアップできたとしても、その先に、思考を手助けする道具がいるように思いました。

明石・神戸の中小企業の未来を照らす経営コンサル
誠光パートナーズ